日本の人手不足の現状と企業への影響
近年、日本では少子高齢化の進行により、人手不足が深刻な社会課題となっています。特に中小企業では慢性的な人手確保の課題に直面しており、限られた人員に業務が集中することで、従業員一人ひとりの負担が増加する傾向にあります。
さらに、自然災害や感染症の流行など、突発的な緊急事態が発生すると、従業員が出社できず、業務が滞るリスクが一気に顕在化する可能性があります。
- 大地震や台風により交通機関が麻痺し、多くの従業員が出社困難となる
- 感染症の拡大による出社の抑制、家族の看護・介護で離脱を余儀なくされる
- 属人化された業務を担う従業員が不在となり、対応不能に陥る
これらのリスクを最小限に抑えるには、「人手不足」を前提としたBCP(事業継続計画)の策定が不可欠です。
出社困難時に起こりうるリスクとは?
従業員の出社が困難になる状況では、企業は次のようなリスクに直面します。
✅ 業務の停滞:営業活動や受発注処理の遅延
✅ 生産・サービス提供の停止:製造業ではラインの停止、サービス業では営業縮小
✅ 情報共有の混乱:非対面環境における連絡・報告が不十分になる恐れ
✅ 顧客対応の品質低下:納期遅延や問い合わせ対応の遅れによる信用低下
これらを回避するには、事前にリスクを想定し、代替策を盛り込んだ実行可能なBCPを構築することが鍵となります。
リモートワーク・フレックスタイム制度の活用法
リモートワークは、人手不足や災害時の出社困難といったリスクに対し、業務を止めずに継続するための有効な手段です。しかし、単にテレワーク環境を整えるだけでは不十分であり、業務内容の見直しや制度設計、セキュリティ対策など、事前の準備と運用ルールの整備が欠かせません。
リモートワークの導入ステップ
- 業務の可視化:どの業務をリモートワークで対応できるか棚卸しを行う
- ITツールの整備:クラウドサービス、ビデオ会議、チャットツールなどを導入
- セキュリティ対策:VPNやアクセス制限など、情報漏洩対策の実施
- 就業ルールの明確化:勤怠管理や業績評価のルールを整備
また、業種によっては完全なリモート対応が難しいため、フレックスタイム制度や時差出勤、代替拠点の確保といった柔軟な働き方の選択肢も検討が必要です。
多能工化とスキルシフトによる属人化の回避
特定の業務が特定の人に依存する“属人化”は、人手不足時の最大のリスク要因であり、企業の柔軟な対応を妨げます。この対策として有効なのが、多能工化(マルチスキル化)です。
多能工化の具体策
✅ ジョブローテーション:日常業務の一部を定期的に異なる従業員に経験させる
✅ 業務マニュアル・手順書の整備:標準化された対応を可能にし、属人化を防止
✅ 教育・研修の実施:異なる業務に柔軟に対応できるよう、OJT研修の実施や外部研修などを活用する
✅ スキルマップの作成と活用:代替要員の把握と配置判断に役立てる
このような取組みを通じて、誰かが欠勤しても「業務が止まらない」体制を構築していきます。

業務の効率化と自動化による負担軽減
人手不足を乗り越えるには、業務そのものを見直し、無理・ムダを省いた運用に変えることが重要です。特に、以下のような効率化・自動化の取組みがBCPの観点からも有効です。
✅ RPAによる定型業務の自動化:請求処理、データ入力、在庫確認など
✅ テンプレートや定型文の活用:メール対応や報告業務の簡略化に有効
✅ 生成AIの活用:議事録の下書き、文章の要約、案内文の作成など、日常業務の効率化に活用可能
✅ 業務プロセスの棚卸と最適化:手作業依存の業務を減らし、担当者の負荷を分散
まずは低コスト・低リスクで取り組める省力化策から始めるのが現実的です。生成AIを活用したシンプルな業務効率化から検討していくことも有効です。

外部リソース・アウトソーシングの活用
社内だけでの対応に限界がある場合は、外部のリソースを活用することも重要な選択肢です。
✅ 業務委託・派遣活用:短期間のサポート要員を確保する
✅ クラウドソーシングの活用:バックオフィスやコンテンツ業務を外部に委託する
✅ 提携企業との相互補完:物資・設備・一部業務の相互補完体制を整備
なお、提携企業との協力体制については、法的責任や情報管理などの整理も必要です。防災協定や業界団体との連携を入り口にするなど、段階的な構築を推奨します。
まとめ
人手不足の状況が続く中で、従業員が出社できない状況に備えることは、今後の企業経営において必須の課題です。
事前にBCPを策定し、リモートワーク、多能工化、業務の効率化・自動化、外部リソース活用などの対策を組み合わせ、現実的かつ機動的に機能するBCPを整備しましょう。
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